高島敏夫の研究室

白川文字学第二世代です。2017年8月にはてなダイアリーから引っ越してきました。少しずつ書き継いでいきます。

文字学

「象形文字」ではなく「形象文字」といえば適切な表現になる

最近、やっと気付いたことがあるので、記しておきたい。 以前、拙論で「言葉の意味するところをイメージで描き出した文字が初期漢字の甲骨文・金文だということ」と書いたことがある。少し前から引用しておこう。 《「古代語」という槪念を立てて、付加要素…

「金文に見る古代語の文字表現(一)序論 なぜ古代語なのか」

白川研究所〔略称〕の「紀要」に掲載した論文がPDFになったのでお知らせしておきます。 (注)「立命館白川静記念東洋文字文化研究所」がフルネーム。 「金文に見る古代語の文字表現(一)序論 なぜ古代語なのか」 http://www.ritsumei.ac.jp/acd/re/k-rsc/s…

「金文語彙索引」を作成することによって得たもの

「金文語彙索引」を全て手仕事だけでやったことによって、金文の語彙を「身体が覚える」という趣旨で書いたことがあるが、翻って考えてみればそれ以外にも色々得たものがあることに気付いたので、今回改めて書き留めておくことにする。 この作業は一見単純作…

拙論「殷周革命論」のファイル

「殷周革命論」と題して連載してきたものの「金文篇」が一応一段落しました。正直なところ、殷周革命に関する謎解きがここまで出来るとは思ってもいませんでした。と言いますのも、当初は、陜西省岐山県の「周公廟遺址」から出土した甲骨文(殷末周初のもの…

2020年度連続公開講座(全3回)のお知らせ(変更あり)

今年は西周後期の代表的な青銅器である《毛公鼎》を読みます。 実施日時:11月28(土)14:00~16:00 3月13日(土)14:00~16:00 3月27日(土)14:00~16:00 会場:立命館大学衣笠キャンパス 創思館カンファレンスルーム 講師:高島敏夫 内容: 去年は西周…

文法と言語あるいは文法論と言語論

文法といえば大抵の人は学校文法(橋本文法)しか想定しないようだが、文法という場合、言葉一つ一つの働き、言葉間の相互関係、言葉の機能等々、言語で表現された言葉の全体と個々の言葉の働きのすべてを含むものなのである。別の言い方をすれば、言語を観…

「古代語」という概念の重要性

拙著『甲骨文の誕生 原論』を上梓したことによって、甲骨文や金文の時代の言語に即した文字観を打ち出すことができた。この文字観は「特別な時に用いられる口頭言語(雅語)を記録したものが文字である」というものだが、その後もいきなり文字で記す(文字言…

連続公開講座「西周時代の金文を読む」(全3回)のお知らせ

今年も連続公開講座(全3回)を下記の要領で実施します。 昨年は甲骨文を読みましたが、今年は金文を読みます。場所は去年と同じですが、開始時間を午後2時からとしました。チラシを下に貼り付けておきます。

「史」の本義

この度の拙論(※)で「史」概念の問題にやっと決定的な結論を提示することができました。「史」は、これまで恩師白川静による甲骨文の用例の緻密な分析によって、殷王朝の祭祀の一種として措定され、暫定的に「史祭」とも呼ばれていましたが、具体的にはどの…

1月13日(土)に連続公開講座(全3回)『甲骨文(卜辞)を通して殷代社会に分け入る 』の第3回を実施

連続公開講座の第3回(最終回)が近づいてきました。今週の土曜日です。先ずは基本情報から。3回とも同じ場所で変更はありません。 日時:1月13日(土)13:00~15:00 場所:立命館大学、創思館カンファレンスルーム 内容:古代殷王朝の宗教的な社会秩序 …

10月21日(土)に連続公開講座『甲骨文(卜辞)を通して殷代社会に分け入る 』第2回を実施

連続公開講座(全3回)『甲骨文(卜辞)を通して殷代社会に分け入る 』の第2回を実施します。今回は「殷人と祖霊への恐れ」というテーマです。会場・日時の変更はありません。チラシなどは最初の案内文に記しましたのでご覧下さい。⇒6月13日 前回は「甲骨…

高島敏夫「古代中国における文字の誕生・継承・伝播の過程を跡づける」

今週の土曜日(9/30)に立命館土曜講座として下記のテーマで講演します。 高島敏夫「古代中国における文字の誕生・継承・伝播の過程を跡づける ──白川文字学第二世代としての展開」 [場所]立命館末川記念会館講義室 [時間]14:00~16:00 これまで考えようのな…

連続公開講座(全3回)『甲骨文(卜辞)を通して殷代社会に分け入る 』を実施します。

《白川静没後十年記念企画》としての続きです。 甲骨文で記された文(卜辞)を具体的に読んでいきます。卜辞を通して殷代社会の特質や人々の考え方(世界観)を実感的に理解できるようになることがねらいです。言い換えれば、甲骨文の字形から文字の成り立ち…

  拙著『白川文字学の原点に還る──「甲骨金文学論叢」を読む』(朋友書店)の書評

拙著『白川文字学の原点に還る──「甲骨金文学論叢」を読む』(朋友書店)の書評が「週刊読書人」(11月18日)に載りました。

「言語の文字表現」という文字観

上記の文章(10月14日)をアップした後で思い出した。以前、三浦つとむ『日本語はどういう言語か』について2回に分けて書いた文章の中で、言語過程説の言語学を、「表現された言語」を研究するための言語学と書いていたのである。もちろんこれは私の捉え直…

語彙索引を作ると身体が覚えるという白川先生の言葉

語彙索引を作ると身体が覚えるという白川先生の言葉 白川先生は語彙索引を作ると身体が覚えるということを何度か仰ったことがある。だが『金文通釈標目器本文索引』(私家版)という「語彙索引」を完成したばかりで解放感の方が強かった私には、いまひとつぴ…

連続公開講座《白川文字学の原点に還る──『甲骨金文学論叢』を読む》のお知らせ

白川静先生没後十年の記念行事の一つとして、連続公開講座《白川文字学の原点に還る》を実施します。実施要領は下記の通りです。 (注)進行状況について 2016.11.21に追記。 2016.11.27にも追記。 初日の「前置き」に時間をかけたため、内容が少しずれ込み…

 『白川文字学の原点に還る──「甲骨金文学論叢」を読む』(朋友書店)

※Amazonでも購入できるようになりました。2016.10.31 取扱書店情報を追加しました。2016.10.13 拙著『白川文字学の原点に還る──「甲骨金文学論叢」を読む』(朋友書店)を刊行致しました。白川文字学の真髄である『甲骨金文学論叢』を読む人のために書いたも…

 久しぶりだが近況報告を簡単にしておきたい。

拙著『甲骨文の誕生 原論』(人文書院 2015年)を書いたことによって、次の段階に入った。白川文字学第二世代としての第二段階である。具体的にいえば、甲骨文の文字体系(書記システム)を継承した、西周時代の金文(青銅器に刻られた文字)の様々な文字現…

拙著『甲骨文の誕生 原論』の短評

[文字学][言語論]拙著『甲骨文の誕生 原論』(人文書院)の短評が「京都新聞」(2015.6.28日付)に載っていたので紹介します。昨年の夏に書いておいたつもりだったのに、どういうわけか消えているのでもう一度お知らせ。

 拙著『甲骨文の誕生 原論』(人文書院)。

拙著『甲骨文の誕生 原論』(人文書院)がやっと出ました。洒落た装丁なのが嬉しいです。岩村隆昭先生の作品。 どういう内容なのかを知っていただくために、人文書院が「緒論」部分をPDFファイルにしてダウンロードできるようにしてくれています。ある信頼で…

祭祀言語の記録 甲骨文

祭祀言語の記録 甲骨文 2011.11.20同志社大学明徳館1番教室における講演 高島 敏夫 野生から文明へ 文字というものがなぜ生み出されたのかという問題は、人類にとって非常に大きな問題を孕んでいます。なぜなら文字を生み出し、それを大勢の人々が使うよう…

白川静『甲骨金文学論叢』の概略

白川静『甲骨金文学論叢』の概略について記してみます。原テキストは白川の自筆で書かれた油印本ですが、平凡社の『白川静著作集』の別巻として出版されつつあります。上・下2巻構成で、現在は上だけ刊行されています。 この論文集の中核になる論文は5篇あ…

文字と言語との関係について

文字学を研究する場合にも言語学は必要だ。文字学特に漢字研究は、文字だけを対象にしてできるかのように考えている人が多いように思うが、それは漢字という文字をあまりにも特別視しているからではないだろうか? 漢字は文字言語だという考えが以前から強く…

白川文字学の原点は『甲骨金文学論叢』

白川静の文字学は『字統』『字訓』『字通』の3部作で世に知られることになりました。しかしこれらの字書を書く土台があったのです。それは『説文新義』でしょう? というお答えが白川ファンから返ってきそうですが、違います。『説文新義』のさらに前に『甲…