高島敏夫の研究室

白川文字学第二世代です。2017年8月にはてなダイアリーから引っ越してきました。少しずつ書き継いでいきます。

2011-03-01から1ヶ月間の記事一覧

研究論文の心臓部分は論証過程だ

学問や研究と呼ぶ世界ではその論文の命は論証である。特に論証過程が最も重要なのであって、極論すれば結論は二の次である。どのように論証しているかによって結論の是非を判断するということだ。 更にもう一点言うならば、物事を考える場合には必ず前提があ…

アルゲリッチ演奏、モーツァルトのピアノ協奏曲第20番

アルゲリッチの演奏でモーツァルトのピアノ曲を聞いたことがなかったのだが、今日はふと思い立って、YouTubeを検索したところ本当に出てきた。凄い時代になった。画面の右上にBS2と書いてあるので、衛星テレビの録画である。こういうことができるのか。画面…

フレーザー『旧約聖書のフォークロア』

フレーザーの『旧約聖書のフォークロア』に戻る。目次のうち章立ての大目次だけを下に記しておいた。 私は一昨年、「春秋時代における『天命』と『大命』」(「学林」49号)と題して、古代中国における成文法のことについて論じた時に、古代イスラエルの場合に…

シン・ヒョンスのヴァイオリン独奏

今日は京都市交響楽団の定期演奏会に行ってきた。私にとって心のリフレッシュのできる大切な時間である。ある意味では優れた文学作品を読んで感動することに匹敵する貴重な体験ができる時間でもある。音楽の楽しみ方には色々あっていいと思うし、他人の楽し…

命の大切さとは何を意味するのか?

秋葉原無差別殺人の犯人加藤智大が死刑の判決を受けた。今度はさすがに死刑廃止論は出てこなかった。7人を死にいたらしめ、10人を負傷させたが、その中には重傷を負った人もいる。自暴自棄に発した実に凶悪な犯罪であるから、死刑は当然のことだという共…

関根正雄の古代イスラエル研究

一昨日、フレーザー『金枝篇』のことを書いてみたが、フレーザーには『旧約聖書のフォークロア』(太陽社 1976年)という本もある。『金枝篇』ほどぶ厚くはないが長篇である。ところがどういうわけか、日本語訳が再版されていないようで現在入手困難な書…

甲骨文には甲骨文の文字構造がある

許慎の六書を甲骨文にも適用するのは、後漢時代に書かれた『説文解字』の呪縛から解放されていないことを意味する。白川先生もこの呪縛から完全には解放されていない。そのために文字の構造について述べられる時は非常に分かりにくい。それは呪縛から逃れて…

「はてなダイアリー」は手間がかからないのが良い

10日ほど前から使い始めたこの「はてなダイアリー」はなかなか使いやすい。ほとんど手間がかからないのでとても楽だ。文章を書くことを主な目的とする人は「はてなダイアリー」を使われるのが良いと思う。最初は、「ダイアリー」とあるので日記を書くための…

フレーザー『金枝篇』

久保寺逸彦『アイヌの文学』のことから、古代呪術の世界が最近の若い人に知られていないことを連想した。ついでにフレーザー『金枝篇』についても書いておいた方がよさそうだ。岩波文庫では5冊構成になっている。これは縮小版であって、全訳は東京書籍あた…

全壊した家でもう一度やり直すという人がいた。

研究会から帰りひとっ風呂浴びて上がったところ。NHKで被災地の宮古市の模様をやっていた。全壊した家に戻ってきた80歳の男性。もう一度やり直すと言っている。

久保寺逸彦『アイヌの文学』

ある本を探していたら昔買っておいた『アイヌの文学』(岩波新書 1977年)が見つかった。これは「東京学芸大学研究報告」第七集別冊(1956年)所収の「アイヌ文学序説」をそのまま収録したものだという。ぐんぐん引き込まれる。素晴らしい研究だ。アイヌ語の…

白川静『甲骨金文学論叢』の概略

白川静『甲骨金文学論叢』の概略について記してみます。原テキストは白川の自筆で書かれた油印本ですが、平凡社の『白川静著作集』の別巻として出版されつつあります。上・下2巻構成で、現在は上だけ刊行されています。 この論文集の中核になる論文は5篇あ…

ソシュールの通時言語学あるいは歴史的言語学

前回はソシュール言語学を理解するための書物として、丸山圭三郎の3著と相原奈津江『ソシュールのパラドックス』について記した。いずれも優れた書物で、文字学を研究している私にとって計り知れぬほどの恩恵を受けた。現在進行中の『古代中国における文字…

丸山圭三郎のソシュール言語学研究と相原奈津江

ソシュール言語学の研究レベルでは、日本が世界的にみて非常に高い位置にあるようだ。これは丸山圭三郎の大きな功績だと思う。丸山以前のソシュール理解に大きな誤解があった原因は、ソシュール名義の『一般言語学講義』のテキストに問題があったことにもよ…

文字と言語との関係について

文字学を研究する場合にも言語学は必要だ。文字学特に漢字研究は、文字だけを対象にしてできるかのように考えている人が多いように思うが、それは漢字という文字をあまりにも特別視しているからではないだろうか? 漢字は文字言語だという考えが以前から強く…

柄谷行人をまた評価するようになった

しばらく離れていた柄谷行人がまた気になってきた。『世界共和国へ』からである。柄谷が国家論をはじめるとはちょっと予想外だったが、しかし読んでみるとなかなか良い。国家観が頓珍漢ではないからだ。これなら私が最も評価する滝村隆一の国家論にも通じる…

白川文字学の原点は『甲骨金文学論叢』

白川静の文字学は『字統』『字訓』『字通』の3部作で世に知られることになりました。しかしこれらの字書を書く土台があったのです。それは『説文新義』でしょう? というお答えが白川ファンから返ってきそうですが、違います。『説文新義』のさらに前に『甲…