高島敏夫の研究室

白川文字学第二世代です。2017年8月にはてなダイアリーから引っ越してきました。少しずつ書き継いでいきます。

フレーザー『旧約聖書のフォークロア』

 フレーザーの『旧約聖書フォークロア』に戻る。目次のうち章立ての大目次だけを下に記しておいた。
 私は一昨年、「春秋時代における『天命』と『大命』」(「学林」49号)と題して、古代中国における成文法のことについて論じた時に、古代イスラエルの場合にも同じことが言えているのが大変参考になった。たいていの王朝では古代において、慣習法から成文法に切り替える時期がいつかやってくる。それは文字の普及と密接な関係があるのだが、そのことは今は置いておくことにして、その時に共同体内の倫理の問題、人間としての倫理意識に関する議論が巻き起こる。法や決まりを目に見える形にしてしまうと、予め刑罰の軽重を計る意識が出てくるため、成文法がかえって犯罪を助長するのではないか、という懸念が出される。どこか先日書いた文章に繋がってくる要素が出てくる。詳しくは上記の拙稿をご覧いただくとして、フレーザーのこの書はこういう問題だけでなく、古代社会に共通する点で、しかも中国の文献に欠けている事柄に気付かせてくれる場合がある。また先日言及した関根正雄をはじめ旧約聖書の研究も古代中国について考える場合に色々ヒントになることが多いので、お勧めである。

 序文
【第1部 世界の創世記】
第1章 人間の創造
第2章 人間の堕罪
第3章 カインのしるし
第4章 大洪水
第5章 バベルの塔

【第2部 族長時代】
第1章 アブラハムの契約
第2章 ヤコブの相続権
第3章 ヤコブと子ヤギの皮、新しい誕生
第4章 ベテルのヤコブ
第5章 井戸のヤコブ
第6章 石塚の盟約
第7章 ヤボクの渡しのヤコブ
第8章 ヨセフの杯

【第3部 士師と列王の時代
第1章 パピルスの舟の中のモーセ
第2章 サムソンとデリラ
第3章 生命の束
第4章 エンドルの口寄せ女
第5章 人口調査の罪
第6章 敷居の番人
第7章 聖樹オークと聖樹テレビン
第8章 イスラエルの「高き場所」
第9章 沈黙する寡婦

【第4部 律法】
第1章 ユダヤ史における律法の位置
第2章 子ヤギをその母の乳で煮てはならない
第3章 死者のためにからだを傷つけること
第4章 人を突いたウシ
第5章 金の鈴