高島敏夫の研究室

白川文字学第二世代です。2017年8月にはてなダイアリーから引っ越してきました。少しずつ書き継いでいきます。

近況など

 こういう状況だが、私自身の研究者としての仕事は今年からまた新しい段階に入る。「古代語の文字表現」という誰も足を踏み入れることのなかった、重要な問題に入っていく。この問題は、当初予定していた『金文評釈(仮題)』と『金文語彙辞典(仮題)』の内容にも反映することになる。私の仕事は恩師白川静の築いた土台を踏まえながらも、それを修正する所から出発したが、当初考えていた内容を大きく踏み越えていく段階に入りつつある。それは恩師から私に伝えられた最後の言葉を実現することでもある。

 白川静が研究者として辿ってきた道の方向性は基本的には正しい。だがその文字観が論理的に不徹底なものだった。* それを修正することによって、白川に見えなかった重要なことが見えてきたということである。白川の一般書だけ読んでいる人はこのことを知る機会がないので、専門的著作に挑戦してもらう他はない。


(*注)「不徹底」というのは不備という意味ではなく、もう少し論理的な追究を進めた方が良かったのに、そこで止めてしまったという意味である。