高島敏夫の研究室

白川文字学第二世代です。2017年8月にはてなダイアリーから引っ越してきました。少しずつ書き継いでいきます。

文字とは何か?──最古の文字とは?【甲骨文の誕生001】

    文字とは何か?──最古の文字とは?(1)


   はじめに

 中国最古の文字とは何ですか? というようなクイズがよく出ますが、おそらくこれに対して「甲骨文」という正解を出せない人はあまりいないでしょう。しかしその一方で、公式的に言えば現存する文字が「甲骨文」だということになっているからそう答えただけで、「甲骨文」以前にも文字があったのに違いないと考えている人も多いでしょう。ではそのように考えるのはなぜでしょう? 私に想定できる理由を挙げてみることにします。
 第一には、世界的に見て象形文字が現れる前の新石器時代にすでに文字のような符号があった。こういうものが次第に発達して象形文字が考え出された。そう考えるのが一般的ではないかと思います。大部分の人がそう考えるので半ば常識のようになっているのではないかと思います。
 第二には、甲骨文がすでに一定の文法に従って言葉を記す段階にあったことです。今詳しくはこのことについて述べませんが、象形文字の段階で一定の文法に則って表現できている文字は世界中広しといえども甲骨文だけです。だからこそその後も大きな変更を加えずに長く使い続けられたのです。そうであるなら、文法に則した表現力を文字が獲得するまでにはそれ相応の時間が必要だったのではないか? そう考える人がいても何ら不思議はありません。事実、これまでの文字学者もほとんどそのような考え方をとってきました。これも半ば常識のようになっているのではないかと思います。
 しかしここで一歩進んで学問的に考えることにしましょう。学問というものは常識を疑うところから始まるという言葉をお聞きになったことがあると思いますが、「文字の誕生」を学問的に考える上で、まずこの常識を疑うところから出発することにしましょう。改めて問うことにしますが、この常識は果たして正しいのでしょうか? 文字のような符号が存在するのでそれが次第に文字になると考えたり、あるいは文法に則した表現力を文字が獲得するまでにはそれなりの時間が必要だったと考えるのは適切な判断なのでしょうか? このことを考える上で、まず新石器時代の符号について考えることにします。

    → 文字とは何か?──最古の文字とは?【甲骨文の誕生002】
        http://mojidouji.hatenablog.com/entry/20110507/1304767826