高島敏夫の研究室

白川文字学第二世代です。2017年8月にはてなダイアリーから引っ越してきました。少しずつ書き継いでいきます。

 【高島敏夫《金文講座》 ──白川静『金文通釈』に沿って】に6篇アップしました。

 【高島敏夫《金文講座》 ──白川静『金文通釈』に沿って】に6篇アップしました。
  今回は(四)として「成周庶殷関係の銘文と王姜関係の銘文を読む」と題しました。

 西周時代初期の殷系氏族の金文ですから、後世の金文と色々違う現象が見られます。「寶」という文字を「缶」字形だけで表わしたり、他にも色々あってなかなか油断なりません。文字の変遷を単純化して理解しようとするとお手上げですが、発想を転換してむしろこういう現象を面白いと思って頂いた方が、古代文字の現実に順応しやすいと思います。

 小生、数日前まで今夏の猛暑でへばっておりましたが、二、三日前から元気を回復しつつあります。公開講座の時には元気な姿で臨めそうです。みなさんはいかがでしょう?


018~023のテキストはここからダウンロードできます https://drive.google.com/file/d/18mJRuxBUMFP6w1eC1wjD01SvhaeuOQyI/view?usp=sharing

【018《金文講座》019 五侯𢓊卣(保卣)】https://youtu.be/mBuKFQRpHA4
 今回は018~026を(四)として成周庶殷関係と王姜関係の銘文を読んでいきます。この銘文は五と呼ばれる地域を支配していた五侯𢓊が、西周王朝の傘下に入る意思を表明したことを物語る内容になっています。


【019《金文講座》020 [走𠳋]卣】https://youtu.be/mE64LX8Cho4
 十三月が出てくる銘文。これを年末置閏法という。作器者が王から采地を与えられたことが記された銘文。母方の姞の家のために寶彝を作ったという。テキストには特殊なフォントを使っているので、合成字 [走𠳋]で記した。


【020《金文講座》021 ゴウ刼尊】https://youtu.be/BOoBgynv02Y
 変わった名前の作器者でこれも特殊なフォントを使っているので記せない。この銘文には他にあまり例のない表現が見られる点が興味深い。「征」が「𢓊」と記され、「寶」が「缶」だけで記されるというように、省略する傾向がある。「尊」も西周時代の他の銘文には見られない省略した字形になっている。こういう特殊な文字表現も記憶に留めておく必要がある。


【021《金文講座》022 ケイ鼎】https://youtu.be/xd-EdL9UyMU
 成王が東夷を討伐した時に実際に従軍した人たちの名前が知るされた銘文。王自身が軍の指揮を執ったのではなく、王命を受けた溓公が将軍として命令を発したもの。戦利品が貝である点が興味深い。人名のケイを動画で表示できるフォントがないので「ケイ」と記した。


【022《金文講座》023 員卣・024 員方鼎】https://youtu.be/YZIrlYtT7Rg
 《員卣》は、員が正規軍に先行して鄶の国に入り「金」を得たことを記したもの。《員方鼎》は、王が田猟地で狩りをした時に、員が猟犬を巧みに操って王の狩りに役立ったことを褒められたという銘文。文末に殷室出自であることを示す「図象標識」を記している。


【023《金文講座》025 作册睘卣・026 キ伯卣蓋】https://youtu.be/RYTEUu7taB0
 《作册睘卣》は、成王の妃である王姜が作册睘に発令して、夷伯を安んぜしめたことを記したもの。作册睘は殷系氏族である。王も同席する場で王姜がなぜ発令したのか、どういう背景があったのかという謎を残している。関連器である《作册睘尊》には「族徽」が記されているが、近年の殷墟の発掘によって同じ族徽が記された青銅器が出土した点にも言及した。《キ伯卣蓋》は殷系氏族の「キ伯」が王姜から貝を賜与されたことを記したもの。