高島敏夫の研究室

白川文字学第二世代です。2017年8月にはてなダイアリーから引っ越してきました。少しずつ書き継いでいきます。

用例分析に関するアドバイス

 2月27日の文章の最後尾に加筆した文章をここにも一時的に掲げる。

 用例分析を積み重ねてきた者として一言アドバイスをしておきたい。それは「用例分析」は最初は時間もかかり労力(めげずに続ける粘り強さ)も一通りではないが、「用例分析」の経験は必ず自分の中にデータとして蓄積されるということである。「用例分析」によって直ぐに良い結果を生み出すことができなくて、徒労だったと思うことも少なくないのだが、うまく出来なかったことも含めて、「用例分析」の経験を積み重ねることが、データとして自分の中に蓄積されるわけである。それによって、「用例分析」の作業そのものが次第に苦痛でなくなっていくという具合に進んでいくのである。苦痛でなくなる分、作業効率も上がるし速くもなるのだが、速くなること自体は重要ではない。むしろ警戒すべきである。苦痛でなくなるということの方が重要なのである。そうなれば一山越えたことになる。これが次の一歩を踏み出す大きな力になるのである。自分の中に用例分析のデータが蓄積されてきたという実感は、かなり後で分かる時がくる。
 先ずは、用例を分析した良い論文を読むことから始めなければならない。だが、そのような論文を読むこと自体が苦痛である限り、用例分析という作業を始めることなどできないのである。この理屈は分かるはずだ。白川静の『甲骨金文学論叢』所収の論文を読むのが大変なのは、甲骨文の用例を徹底的に集めてきてそれを分析することによって結論が導かれる論文だからである。白川文字学を批判する人の中に、用例分析に基づかない文字学だというようなことを、述べ立てる者がいるが、そうした人がどのような人たちであるのかは、自ずから分かるであろう。

 最後尾に用例分析に関するアドバイスを加筆した。  2019.5.28