高島敏夫の研究室

白川文字学第二世代です。2017年8月にはてなダイアリーから引っ越してきました。少しずつ書き継いでいきます。

拙著『西周王朝論《話体版》』(朋友書店)について(1)

 今回の刊行に当ってルビを大幅に増やしました。引用した文献や金文も読みやすくなっているはずです。元々高校生でも読めるものをと思って書いたものですので、大学生なら分かる書き方になっているようです。これを使って講義をしたこともあるので実証済みです。専門外の方でも容易に読んで頂けるものと思います。事実、そのような声が耳に入ってきます。ですが、決してレベルを落しているわけではありません。お間違いのないように。
 エポックメーキング的な論考ですので、敢て修正することは避け、随処に「補記」を入れる形で新出資料についても言及しておきました。幸いにして新出資料によって特に書き換える必要がないからです。
 最新の資料を使ったことを最大の売り物にするものは、見かけが新しくてもテーマや内容の発想が意外に通俗的で古臭いものが多いです。大切なことは、従来から知られた出土資料の甲骨文や金文の読みを深める努力を怠らないこと、また伝承文献をも軽視することなく、そこから重要なことを読みとる努力を継続することだと思います。新出資料に無関心なのもいけませんが、新出資料ばかりに気を取られると、常に情報に振り回されるため腰の据わらないテーマになりやすいものです。自分では最新の資料を使った「最先端の研究?」のつもりだったのに、暫く経つと古臭いものになってしまうという運命にさらされます。
 今後も新出資料には一応目配りしますが、必ずしも言及するとは限りません。研究と情報処理とは別物だからです。一世を風靡した戦国楚簡なる資料がどのようなものか、じっくり見ている人には段々分かってきた筈です。ですが、戦国楚簡が発見されたことによって、従来資料の読み方のヒントを得たことも確かですので、戦国楚簡が発見されたことは、やはり画期的なことだったのは疑いないことです。