高島敏夫の研究室

白川文字学第二世代です。2017年8月にはてなダイアリーから引っ越してきました。少しずつ書き継いでいきます。

利根川進・立花隆『精神と物質』から

「学問の曲がり角」と言われることもある現代日本の学問の世界だが、学問に対する情熱が薄れつつある時代、情報に流されやすい時代とも言い換えることができる。そしてその傾向を強めつつあるのではないかという懸念は消えない。そんな時、学問への情熱をもっていた人の貴重な発言を思い出すのである。

 

○自分はこれが本当に重要だと思う、これなら一生続けても悔いはないと思うことが見つかるまで研究をはじめるなといってるんです。科学者にとって一番大切なのは、何をやるかです。若いときに本当に大切なのは、この本当に重要なものを重要と判断できるジャッジメント能力を身につけることなんですね。若いときにそれを身につけなかった人が多いから、どうでもいいことをやっているのに自分では何か重要なことをやっているつもりで一生を終るサイエンティストが多いわけです。(89頁)

○大切なのは、オリジナルでかつ重要度が高いことをやることです。(90頁)

○つまんないことを発見しただけで大発見だと大騒ぎしすぐ論文を書く人もあれば、本当の価値ある発見にいたるまで実験をつづけ、なかなか論文を書かない人もいる。(104頁)

○大ざっぱな方向だけ決めれば、あとは人の論文を読むより自分の研究に熱中するほうなの。(124頁)

○サイエンスでは、自分自身がコンヴィンス(確信)するということが一番大切なんです。(139頁)

○自分自身に何度も何度も、本当にそうなんだろうか、絶対間違いないんだろうか、と問い直して、いやこれで絶対に間違いないと、時間をかけて、徹底的に問い詰めた上でのコンヴィンスね、これができればいいわけです。(139頁)

○できる人はそれが自分の考えていたことに反することでも、思いがけない結果が出たら、すぐそれに『ええっ』と思って注目する。そしてそれじゃこれはこうなってるんじゃないか、いやこうなってるんじゃないかと、あれこれ一生懸命アナリシス(分析)する。そういうところから、新しい仮説も生まれるし、新しい実験計画も生まれてくるんです。(148頁)

○かなりの部分天性なんでしょうね。それと大切なのは、インテンス(熱心)にものを見る、インテンスにものを考えるということね。(149頁)

○何でこれが失敗したんだろうと、考えて考えぬく。観察と考察にかける集中力ね。これが大事なんです。(149頁)

○いくら失敗しても決してあきらめないで、ずっと探求をつづけられるというのがサイエンティストの基本的条件でしょうね。どこかでブレイクスルーが見つかる。(151頁)